世襲議員調査｜政党別、選挙区別などの一覧、人数、割合

世襲に反対、容認。

人それぞれ評価があって良いでしょう。

ただし、その評価は事実に基づくものでなければなりません。

 

では、我々は事実に基づいて世襲を評価しているか？

世襲議員が何人いて、それは全議員の何％なのか。

多くの国民は正確な実態を把握することなく、世襲の是非を評価しているのではないでしょうか？

 

それでは世襲に対する正しい評価はできません。

それどころか、マスコミや識者、インフルエンサーなどに都合よく世論操作されかねない。

事実に基づいて評価する姿勢を、すべての国民が身に付ける必要があると私は考えます。

そこで、評価の出発点となる世襲議員の実態を調査することにしました。

 

なお、本調査の目的は世襲議員の実態を明らかにすることです。

世襲反対の立場から世襲議員を多く見せることでも、世襲容認の立場から世襲議員を少なく見せることでもない点にご留意ください。

世襲議員調査の趣旨

調査方法

調査対象は2024年10月28日時点の衆議院議員465名と参議院議員241名の合計706名です。

各議員の所属政党は同日時点のものとします。

各議員のデータはWikipedia掲載のものを用い、不足分は都度ネット検索しました。

世襲議員の定義は次節の通りです。

 

世襲議員の定義

世襲議員の定義

本調査では世襲議員を以下の通り定義します。

 

定義の説明

世襲議員批判の理由で多いのは、いわゆる3バン（カバン＝資金、地盤＝後援会組織、看板＝知名度）があるため、選挙で世襲議員が有利になり不公平であるというものです。

そこで、本調査では3バンが有効に機能するか否かを定義の基準としました。

各定義を定めた理由を以下に説明します。

 

多くの世襲議員の定義では父母、祖父母のみを対象としています。

しかし、例えば故安倍晋三元総理の逝去直後に安倍昭恵氏が山口選挙区から立候補したならば、3バンを継承し選挙に有利になったでしょう。

また、引退した議員に子供がおらず甥が世襲や、兄急死で弟が世襲といった事例も実際にあります。

このため、配偶者、兄弟姉妹等も世襲定義の対象としました。

 

例えば、山梨県知事の子供が参議院山梨選挙区で立候補すると、3バンが有効に機能する可能性が高いです。

では、奥多摩町議会議員の子供が衆議院東京25区で立候補した場合はどうでしょうか？

東京25区の有権者数40万人に対し、奥多摩町は総人口でも4千人にすぎません。

町議会議員の3バン程度では効果はほとんど期待できないです。

個別のケースによりますので線引きが難しいですが、今回の調査では国会議員、都道府県知事、政令市長までを定義の対象としました。

 

北海道1区を地盤とする先代が死去したが、党内調整で北海道2区からの立候補となったケースなどがあるため、「その選挙区が属する都道府県内の他の選挙区」を定義の対象としました。

一方、北海道1区の3バンが秋田2区で機能するとは考えにくいため、都道府県外は定義の対象とはしません。

 

先代から地盤を引き継ぎ落選を3回繰り返し4回目で当選した場合、4回目まで3バンを継承し続けているため、定義の対象としました。

逆に退任から5年経って子供等が立候補した場合、後援会組織が維持できているのか、先代の知名度が残っているのか疑問です。

とは言え、3バンの効果がゼロとまでは言えない気がします。

このため、5年以内を世襲議員、5年超を準世襲議員としました。

これについては異論が多々あると思いますし、私もこれがベストな定義だとは思っていません。

 

おことわり

あとがきで詳しく説明しますが、今回の調査は世襲議員の定義に問題があり、実態を正確に反映できているとは言い難い内容です。

私は「拙速は巧遅に勝る」主義なので、とりあえずの調査結果として出しましたが、参考程度にとどめてください。

後日、ゼロベースで再調査するつもりです。

 

世襲議員の一覧・リスト

表の見方

衆議院 ○○県小選挙区

• 「政党」で無は無所属を表し、無所属は新党大地と沖縄社会大衆党を含む
• 「初当選」は国会議員として初当選した時期、96/10はそれが1996年10月だったことを表す
• 「世襲」で非は非世襲議員、世は世襲議員、準は準世襲議員を表す
• 「経歴」は先代の経歴、国は国会議員、知は都道府県知事、市は政令市市長、96/7-00/7は在任期間が1996年7月から2000年7月だったことを表す

 

参議院 ○○県選挙区

• 同上

 

衆議院 比例○○ブロック

• 「選挙区」は重複立候補した小選挙区であり、「単」は比例単独候補であることを表す
• 他は同上

 

北海道

衆議院 北海道小選挙区

• 鈴木貴子：鈴木宗男10/9政治資金規正法違反等実刑確定で議員失職、公民権停止中の12/12貴子立候補するも落選、13/6繰り上げ当選
• 石川香織：石川知裕13/5政治資金規正法有罪で辞職、公民権停止中の17/10貴子立候補し当選

 

参議院 北海道選挙区

 

衆議院 比例北海道ブロック

 

東北

衆議院 青森県小選挙区

 

参議院 青森県選挙区

 

衆議院 岩手県小選挙区

 

参議院 岩手県選挙区

 

衆議院 宮城県小選挙区

 

参議院 宮城県選挙区

 

衆議院 秋田県小選挙区

• 村岡敏英：05/9, 09/8, 10/7落選、12/12当選

 

参議院 秋田県選挙区

 

衆議院 山形県小選挙区

 

参議院 山形県選挙区

 

衆議院 福島県小選挙区

 

参議院 福島県選挙区

 

衆議院 比例東北ブロック

 

北関東

衆議院 茨城県小選挙区

 

参議院 茨城県選挙区

 

衆議院 栃木県小選挙区

 

参議院 栃木県選挙区

 

衆議院 群馬県小選挙区

• 笹川博義：笹川堯群馬2区で任期中の96/10に博義群馬3区で落選、00/6、04/7落選、群馬県議2期を経て12/12当選

 

参議院 群馬県選挙区

 

衆議院 埼玉県小選挙区

• 小宮山泰子：重四郎の次男徹96/10落選、泰子00/6、01/7落選、03/11当選、間に徹を介するものの、小宮山家として3バンは継承しており、先代辞職後5年以内に立候補し落選継続後当選に準ずる

 

参議院 埼玉県選挙区

• 高木真理：夫（高木錬太郎、国、17/10-21/10）の任期終了5年以内の初当選だが、03年より埼玉市議、埼玉県議として活動しており、地盤を継承していない

 

衆議院 比例北関東ブロック

 

南関東

衆議院 千葉県小選挙区

 

参議院 千葉県選挙区

• 臼井正一：日出男引退で後継するも09/8落選、11/4から千葉県議を務めた後、22/7当選

 

衆議院 神奈川県小選挙区

• 河野太郎：河野洋平の地盤旧神奈川5区が94年区割り変更で15～17区に、96/10太郎15区、洋平17区で当選

 

参議院 神奈川県選挙区

 

衆議院 山梨県小選挙区

 

参議院 山梨県選挙区

 

衆議院 比例南関東ブロック

 

東京

衆議院 東京都小選挙区

• 伊藤俊輔：伊藤公介12/11引退、俊輔12/12, 14/12落選、17/19当選

 

参議院 東京都選挙区

 

衆議院 比例東京ブロック

• 鳩山紀一郎：叔父鳩山邦夫99/3まで現東京2区選出も、以降00/6比例東京、03/11東京18区、05/9以降は福岡6区、死没（16/6）から8年経っており、後援会組織も継承しておらず、3バンのうち知名度しか機能していない

 

北陸信越

衆議院 新潟県小選挙区

• 黒岩宇洋：黒岩秩子は参院比例区、宇洋初当選は参院新潟で選挙区は異なるが、秩子在任中は公設秘書を務めており地盤継承と判断
• 梅谷守：筒井信隆13/9引退、梅谷14/12、17/10落選、21/10当選

 

参議院 新潟県選挙区

 

衆議院 富山県小選挙区

 

参議院 富山県選挙区

• 野上浩太郎：野上徹、86/6、90/2、93/7、96/10すべて落選で引退

 

衆議院 石川県小選挙区

 

参議院 石川県選挙区

 

衆議院 福井県小選挙区

 

参議院 福井県選挙区

 

衆議院 長野県小選挙区

• 下条みつ：下条進一郎95/7、98/7落選、みつ00/6落選、03/11当選

 

参議院 長野県選挙区

 

衆議院 比例北陸信越ブロック

 

東海

衆議院 岐阜県小選挙区

• 棚橋泰文：棚橋93/7落選、96/10当選

 

参議院 岐阜県選挙区

 

衆議院 静岡県小選挙区

 

参議院 静岡県選挙区

 

衆議院 愛知県小選挙区

 

参議院 愛知県選挙区

 

衆議院 三重県小選挙区

 

参議院 三重県選挙区

 

衆議院 比例東海ブロック

 

近畿

衆議院 滋賀県小選挙区

 

参議院 滋賀県選挙区

 

衆議院 京都府小選挙区

 

参議院 京都府選挙区

 

衆議院 大阪府小選挙区

 

参議院 大阪府選挙区

 

衆議院 兵庫県小選挙区

• 松本剛明：96/10落選、00/6当選

 

参議院 兵庫県選挙区

 

衆議院 奈良県小選挙区

 

参議院 奈良県選挙区

 

衆議院 和歌山県小選挙区

 

参議院 和歌山県選挙区

 

衆議院 比例近畿ブロック

 

中国

衆議院 鳥取県小選挙区

 

衆議院 島根県小選挙区

 

参議院 鳥取島根選挙区

 

衆議院 岡山県小選挙区

 

参議院 岡山県選挙区

 

衆議院 広島県小選挙区

 

参議院 広島県選挙区

• 宮澤洋一：00/6宮澤喜一の衆院比例中国ブロック転出に伴い衆院広島7区を継承

 

衆議院 山口県小選挙区

• 林芳正：義郎94/8の区割り変更で衆院旧山口1区から衆院比例中国に転出、芳正95/7参院山口で地盤継承

 

参議院 山口県選挙区

 

衆議院 比例中国ブロック

 

四国

衆議院 徳島県小選挙区

 

衆議院 高知県小選挙区

 

参議院 徳島高知選挙区

 

衆議院 香川県小選挙区

 

参議院 香川県選挙区

 

衆議院 愛媛県小選挙区

 

参議院 愛媛県選挙区

 

衆議院 比例四国ブロック

 

九州

衆議院 福岡県小選挙区

 

参議院 福岡県選挙区

 

衆議院 佐賀県小選挙区

 

参議院 佐賀県選挙区

 

衆議院 長崎県小選挙区

• 西岡秀子：16/1落選、17/10当選

 

参議院 長崎県選挙区

 

衆議院 熊本県小選挙区

 

参議院 熊本県選挙区

 

衆議院 大分県小選挙区

 

参議院 大分県選挙区

 

衆議院 宮崎県小選挙区

 

参議院 宮崎県選挙区

 

衆議院 鹿児島県小選挙区

 

参議院 鹿児島県選挙区

 

衆議院 沖縄県小選挙区

 

参議院 沖縄県選挙区

 

衆議院 比例九州ブロック

 

参議院 比例代表

• 本田顕子：本田良一04/7落選、10/5みんなの党入党、本田顕子みんなの党で10/7、12/12、13/7落選、19/7当選

 

世襲議員の人数と割合

政党別

政党別一覧

• 世襲議員には準世襲議員を含まない、以下同

 

自由民主党

 

公明党

 

立憲民主党

 

日本維新の会

 

国民民主党

 

日本共産党

 

れいわ新選組

 

参政党

 

社会民主党

 

日本保守党

 

無所属

 

議院別

 

選挙制度別

衆議院

• 選挙区は北海道1区から沖縄4区までの合計
• 比例区は北海道ブロックから九州ブロックまでの合計

 

参議院

• 選挙区は北海道選挙区から沖縄選挙区までの合計

 

衆参合計

 

地域別

• 地域割は衆議院比例区のブロックに準ずる
• 参議院比例区は地域性がないため集計対象外

 

地域別一覧

 

北海道

 

東北

 

北関東

 

南関東

 

東京

 

北陸信越

 

東海

 

近畿

 

中国

 

四国

 

九州

 

都市部・地方部別

• 本調査で都市部の定義は明確なものではなく、「都会やベッドタウンでサラリーマン世帯が多そう」という筆者の主観による
• 調査対象は衆議院小選挙区のみで、具体的には北海道1～3区、宮城1～2区、埼玉1～5、14～16区、千葉1～2、4～8、14区、神奈川1～13、18～20区、東京1～24、26～30区、愛知1～7、10、16区、京都1～3区、大阪1～18区、兵庫1～3、6～10区、福岡1～2、9～10区を都市部、他を地方部とする

 

男女別

 

あとがき

世襲議員の定義が重要

定義を失敗した

冒頭に書いた通り、今回の調査は世襲の定義を失敗しました。

それが顕著なのは麻生太郎議員が準世襲議員扱いになったことです。

麻生議員は1979年の衆議院選挙に初めて出馬し当選しました。

しかし、父親の麻生太賀吉が衆議院議員であったのは1949～1955年であり、引退から24年が経っています。

また、義父（妻の父）の鈴木善幸は議員在任中（1947～1990年）でしたが、選挙区は旧岩手1区でしたので、麻生議員はカバンも地盤も継承していません。

ですので、今回の私の定義では麻生議員は準世襲議員扱いにしかならないのです。

このような例が少なからずあるため、世間一般の実感よりも世襲議員が少ない調査結果になったのだと思います。

 

定義は難しい

では、麻生議員が世襲議員扱いになるように、期限を25年に伸ばせば良いのか？

そうすると逆に、先代の引退から25年が経ち、後援会はすでに解散、先代を知らない人が大半になったなか、実質ゼロスタートの独力で議員になった人を世襲議員扱いすることになってしまいます。

世襲議員の定義は極めて難しいです。

どう定義すれば良いのか、次回調査までによく考えてみます。

 

定義によって調査結果は操作できる

調査をして分かったのが、定義によって調査結果などいくらでも操作できるということです。

世襲の範囲を広くすれば世襲議員を増やせるし、逆に狭めれば減らせる。

情報の受け手の印象操作など、定義をいじれば自由自在、いくらでも好きなようにできます。

 

定義しないことも可能

それ以上に恐ろしいのは、定義しないという手があることです。

マスコミは世襲の定義を明示した上で、世襲について報道しているでしょうか？

少なくともテレビではしていないことのほうが圧倒的に多いでしょう。

報道する都度、定義を都合よく変えれば、好き勝手に世論操作することも可能です。

これは世襲に限らずあらゆるテーマについて言えます。

 

定義に注意すべき

情報や報道に接する際は定義を確認する必要がある。

定義のない情報は疑ってかかる。

定義に注意すべきというのが、今回の調査を通して最も学んだことです。

以上