国会議員の世襲を禁止すべきとの声が非常に多いです。
しかし、私は世襲禁止には絶対反対です。
その理由を述べます。
なお言うまでもありませんが、世襲、非世襲を問わず、無能、有害な議員を擁護する意図は一切ありません。
世襲禁止に反対する5つの理由
世襲禁止に反対する理由は以下に述べる5点です。
民主主義の否定である
有権者が自らの意思、判断基準で自分たちの代表を選ぶことは、民主主義の根幹です。
世襲議員を選んだ有権者は、自らの意思、判断基準で世襲議員を選んでいます。
世襲の禁止は、世襲議員を選んだ有権者の選択を否定することです。
民主主義国でそのようなことが許されて良いのでしょうか?
先代の先生にはお世話になったし、誠実で優秀な人だった。
だから、息子先生も素晴らしい人に違いない。
私にはまったく理解できませんし、1ミリたりとも共感できません。
しかし、息子先生に一票を投じた人も私と同じ有権者であり、その選択は私の選択と同等に尊重されるべきです。
すべての有権者が平等であり、その選択は等しく尊重される。
それが民主主義ではないでしょうか?
息子先生が良いという判断を否定し、世襲議員はダメだという判断基準を押し付ける。
民主主義国において、そんなことは絶対に許されてはなりません。
繰り返しますが、先代にお世話になったという理由で議員を選ぶ思考回路は、私にはまったく理解不能です。
しかし、その選択を否定することには、民主主義国の有権者として、断固反対します。
職業選択の自由に反する
職業を選ぶ自由は憲法22条1項で保証されています。
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
また、自らの出自(生まれ)によって政治的に差別されることは、憲法14条1項に反します。
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地(家柄のこと、筆者注)により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
つまり、すべての国民は自らの生まれに関係なく、議員を含む職業を自由に選択する権利を有します。
そもそも、世襲議員は偶然に政治家の家に生まれてきただけです。
親を選べない子供に罪はないのに、議員を目指せないのは不条理ではないでしょうか?
親を理由に憲法が保証する職業選択の自由を侵害するのは絶対におかしいです。
優秀な人材を議員に選べなくなる
国民民主党の玉木代表の評価が高いですが。
もし玉木氏の親が議員であったら、我々は玉木氏を議員に選べなくなります。
それで良いのでしょうか?
こう言うと「世襲議員にろくなやつなどいない!」と言い出す人が出ますが。
それはすべての世襲議員を調べた上で、間違いのない事実として言っているのでしょうか?
議員の子供が優秀な議員になる可能性は、少なくともゼロではありません。
そうである以上、世襲という理由だけで優秀な議員が生まれる可能性を閉ざすのは、我々有権者にとって著しく不利益です。
世襲が有利にならない選挙制度にすべき
世襲が有利な選挙制度は絶対におかしい
世襲禁止の理由として挙げられるのが、世襲が選挙で有利になることです。
いわゆる3バン(地盤:後援会、カバン:資金、看板:知名度)は、現在の選挙制度で間違いなく有利に働いています。
この点に大きな問題があることには、私も異論ありません。
しかし、それを理由に世襲を禁止するのはおかしいです。
世襲が有利になる選挙制度を変えるべき
世襲は選挙で有利だから禁止すべき。
ならば、医者の子供が医者になるのも禁止すべきでしょうか?
親からの遺伝で地頭が良く、金があるので受験勉強に費用を注ぎ込め、学費も余裕で出せる。
両親が高卒のサラリーマン家庭の子供に比べて、圧倒的に有利で不公平ではありませんか?
もちろんだからと言って、医者の子供が医者になることを禁止して良いわけがありません。
医者の子供が医者になることが悪いのではなく、医者の子供が有利になる受験制度が悪いのです。
それと同じで、議員の子供が議員になることが悪いのではない。
悪いのは議員の子供が有利になる選挙制度です。
世襲を禁止するのではなく、選挙制度を変えるべきです。
一番悪いのは有権者
地元の会合でお酌をすれば票が取れる。
先代先生にお世話になった御恩があるので投票する。
名前をよく聞くのでこの候補にしよう。
愚かしいと思いませんか?
なぜ、地盤、看板、カバンが選挙で有利になるのか。
答えは一つ。
我々有権者が愚かだからです。
世襲議員に限ったことではありません。
元アイドルやガーシーを議員に選んだのは、我々有権者じゃないですか。
我々有権者が変わらずして、日本の政治がどう変わるというのでしょうか?
有権者が愚かである限り、これからも無能な世襲議員は生まれ続けます。
有権者が賢明にならない限り、我が国で民主主義が有効に機能することはあり得ません。
いま、日本の政治に最も必要なのは、有権者教育の強化です。
世襲を禁止しなくても、有権者が候補者を正しく見極め、優れた議員を選べるようにする。
小学校から高校まで12年間かけて、有権者教育を徹底的に行うべきです。
民主主義は絶対に守らなければならない
世襲が政治に悪影響を及ぼしていることに異論はありません。
しかしそれでもなお、自らの意思と判断基準で議員を選ぶ権利は、すべての有権者に等しく保証されるべきです。
議員の子供は議員にふさわしくないという自分の価値観を他の有権者に押し付け、議員を選ぶ自由を侵害することは許されません。
また、誰もが法の下に平等に、議員となり政治に参加する自由は、民主主義国として絶対に失ってはならない権利です。
議員の家に生まれたという理由だけで、その子供から議員になる権利を奪ってはなりません。
議員を選ぶ自由、議員になる自由、すなわち民主主義は、何があっても守らなくてはならない。
世襲という理由で民主主義を否定してはならないのです。
もちろん、世襲には弊害があります。
しかし我々は、世襲の弊害をなくすためにベストを尽くしたと言えるでしょうか?
世襲が有利にならない選挙制度への変更。
我々有権者がもっと賢明になるための努力。
それらをすべて尽くしたと、あなたは言えますか?
ベストを尽くしていないのに、世襲禁止という安易な方法をとって良いのか?
できることをすべてやらずして、議員を選ぶ自由、議員になる自由を放棄して良いのか?
最善を尽くさずに手放して良いほど、民主主義は軽いものなのでしょうか?
世襲を禁止する前に、できること、やるべきことがまだ残っています。
世襲禁止は最後の手段です。
まず、できること、やるべきことをやるべき。
ゆえに私は現時点での世襲の禁止に反対します。
民主主義国の有権者の一人として絶対に反対です。
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